10人で二人暮らし

解離性同一性障害で9人の別人格をもった妻との生活のほんの一面を

二人だけど二人じゃない生活

  • はじめに

解離性同一性障害、分かりやすくいうと多重人格。未だに後者のほうで一般的に知られていますが、1994年のDSM-4 (アメリカ精神医学会による精神障害の診断と統計の手引き第四版)で解離性同一性障害と正式名称が決まっています。痴呆が認知症になったり、精神分裂病統合失調症に名称が変わったように、正式名称は変わりましたが病状がそのまま読んで字のごとしで分かりやすい多重人格という言葉は未だに使われています。

当ブログでは、あえて分かりやすいように「多重人格」という言葉を使うところもありますが、疾病名として表記するときは正式名称を使っていきます。

フィクション、ノンフィクション、様々なジャンルで描かれるこの疾患ですが、多くの人が「存在しているように、さもノンフィクションで語られる存在しない疾患」というイメージがあるのではないかと思います。

これはあくまで自分の実感なのですが、現状をごく一部の人に話したときに自分が強く感じる事です。特に精神疾患というものを身の回りで実感したことがない人は、うつ病ですら、心が弱いだけと一蹴するのですから、自分のパートナーの人格が変わってしまうという話をしても、逆に僕自身の頭が正常か疑われてしまいます。

「24人のビリー・ミリガン」と多重人格に対する人々の印象

 僕と同世代以上の人は多重人格と聞いて90年代に流行った「24人のビリー・ミリガン」という作品を思い出す人もいるでしょう。僕も高校生の時にこの作品を読み、精神・心理という専攻を志す一因となりました。

「24人のビリー・ミリガン」は事実を元に書き上げられた秀作だと思います。ただそれだけに影響力が強く、誤解や偏見を生み、また模倣者を増やしてしまったのも紛れもない事実でしょう。また、「多重人格者=犯罪者」という印象を持った人も少なくないと思います。

 

24人のビリー・ミリガン〈上〉 (ダニエル・キイス文庫)

24人のビリー・ミリガン〈下〉 (ダニエル・キイス文庫)

  

インターネットで精神疾患を扱うにあたって

90年代から2000代初頭のインターネット黎明期に、精神疾患を持った人の個人サイトがそれはそれは沢山ありました。主なコンテンツは日記と投薬内容と掲示板とパスワードのかかった許された人が書き込み閲覧できる掲示板、日記に貼り付けられるか隠しコンテンツとして自傷行為の傷の写真が貼られるようなサイトを当時多く見かけました。こっち見て行動とネットとの親和性は今でもそうですがとても高いと思います。

同じようなサイトで、二重人格を始め多重人格当事者であるというサイトが多くありました。主なコンテンツとして、主人格と副人格の日記のやり取り。それぞれ別の日記だったり同じ日記内で掲示板のように対話していたり、様々な物がありました。

当時は今ほど知識はありませんでしたが、ほとんどが中二病的に多重人格に憧れを持つ模倣者のサイトではなかったのではないかと思っています。少なくとも黎明期のインターネットを閲覧していた人の中で、多重人格の存在を妄言と思われる方は上記のサイトなどを見たことがある人たちではないかと邪推します。

10年近く前にこのようなブログもありました。

架空の人々~なぜ彼らは多重人格になりたがるのか?~

近年、様々な人の啓蒙活動により精神疾患というものが以前のように偏見でみられることが少なくとも10年前より格段に減り、現在では様々な精神疾患の方がブログなど様々な形で現状を公開されています。

もちろん、解離性障害解離性同一性障害の当事者や周囲の人が公開されているサイトもみました。

 更新は10年近く前に止まっていますが、下記のサイトが個人が運営するサイトの中でまとまっているのはないかと思います。少なくともWikipediaを読むよりは理解しやすいのではないかと。

解離性障害・解離性同一性障害について

 

ブログとして公開にあたって

彼女(現在の妻)が解離性障害及び解離性同一性障害とわかり、福祉屋として生きてきた自分の人生をなげうって共に歩もうと決めたとき、何かしらの形で世に出そうという気持ちはありました。自分の専門分野と重なる部分が多かったことや、少しでも多くの人に現実をみていただき、一人でも少なく罹患する人が減ればという思いからです。

綺麗事はなく、泥臭いのではなく泥にまみれてる現状を公開するのは様々な配慮が必要でしたが、妻を含め周囲の人の許可を得ましたので、過去にメモ程度に書き記した文章や現状を不定期に公開していこうと思います。

  • 現状

解離性同一性障害の別人格について

 昨年4月に最初の副人格に出会ってから11カ月。二人で暮らし始めてから7カ月(その前に妻の母と3人で2カ月)の間に、約10人の別人格と出会いました。

詳細なプロフィールはおって書いていきます。とりあえずイニシャルと年齢と性別を書いていきます。

・R 女性 30歳と少し

・Yu 女性 33歳

・S 男性 19歳 (Yuと統合し消滅?)

・E 女性 21歳

・M 女性 33歳

・M’ 女性 17歳 (Mの17歳)

・M’’ 女性 26歳くらい (Mと読みは同じだが漢字が違う別人物)

・Y 女性 17歳 (主人格の17歳時の記憶そのままの人格)

・Y’ 女性 9歳 (主人格の9歳時の記憶そのままの人格)

 

 

以前は、入れ替わり立ち替わり主人格ではない誰かになっていましたが、今は主に本人の事が多く、少しでもバランスが崩れるとM、Y、Y'、主人格である彼女やそれぞれと混じり合った不確定な人格が表に出てきます。

実際問題日常生活で困る解離性障害の症状

解離性同一性障害としての人格交代だけが困ることに思われがちですが、解離性障害の様態である解離性健忘・遁走、離人症性障害、特に生活する上で大変なのが不特定解離性障害として現れる解離性昏迷、失語、解離性運動障害、解離性知覚麻痺および感覚脱失。

つまり、突然意識を失ったり、喋ることが出来なくなったり、身体が動かなくなったり、体の感覚がなくなったりし、日常生活を送ることが困難な状態です。原因になった年齢の時の頃はもちろん、数日前、状態が悪いと数時間前のことも忘れています。いいこと悪いこと含めて忘れることが多いので、それなりに苦労はありますが、大抵は僕が覚えていたり、メモを取っているので何とかなってます。端的にエピソードは忘れるけれど、勉強するようなことは覚える。物語で記憶喪失の人が周囲の人のことは覚えてなくても、勉強した事は覚えているといった感じの認識でいいと思います。

発語が出来なくなったら、拙いながら使える手話とスマホタブレットに書いてコミュニケーションを取ってます。

何が大変か

このエントリを書いている現在、かれこれ19時間ほど眠ったまま。当然、生活時間に差が生まれてもおかしくはないのですが、多分彼女が起きてきてから次に眠るまで僕は起きています。

うっかり寝てしまうと、問題が起こってしまうことが少なからずあるからです。

まずは意識喪失。過去、風呂で動けなくなり、声も出なくなったが、僕はソファでうたた寝。這いずるようになんとか出てきたが、そのまま脱衣所で意識喪失。幸い秋口だったので、体が冷え切る前に、僕が起きて事なきを得ました。

何より困るのが人格交代。僕が寝てしまった間に誰かになり外出。その間全く連絡が取れず、完全に行方不明になってしまう。悪い場合持っているお金、あるいは貯金もすべてギャンブルなどで散財してしまう。これは本当に何度も繰り返したので、監視とはいかないが、なるべくないように気をつけている。でないと生活資金そのものがなくなっている。

もっとも大きいのが働きに出られない事。

寝る時間がないほど目が離せないのに、仕事に出られるでしょうか?

少し前までは週に1,2度、家庭教師として出ていたけどその数時間の間でも大概何かが起こっていたので…その時は不可能だと思って断ることになりました。以前に比べて落ち着いてきた今は復帰できる場所があれば復帰しようと思ってます。

在宅で何かやるにも、昨年9月に自分のPCが壊れてしまい、修理や新しく買うお金もなかったので、昨年末に入籍し家族からの祝儀で何とか直した物でこれを書いています。

理解があるようで…

のちに書いていくことだけれど、出会ってかれこれ2年と少し。つきあってから1年7ヵ月。解離性同一性障害が表出して11カ月。すごく狭い人間関係の範囲で病気の理解は得られたけど、突然リアルの友だち付き合いも、ネットでの活動も収縮しなければならなくなって、友達関係は疎遠になり、ネットでは特にTwitterの片思いが増えたなーと。パソコンを直してTweenを開いたときに最初に思ったこと。

あと、Facebookでも何人かぶちぶちと友達が減ってたり(これは自分に原因があるので仕方ないと思ってる。)

特に理由を告げなかった自分が悪いです。しかし流石に「彼女が多重人格になってちょっと世話するからひきこもるわ」とは言いにくかったのです。言葉を選んでも結果的に同じ事だと当時は思ってたし、今でもこのエントリをTLに載せることによって、理解か誤解か両極端な反応がでるんじゃないかと思ってます。

最初の締め

最初なので、具体的な何かということはあまり触れず、前置きとほんとに大まかな概要になりました。

いきなりあったことを書き連ねるより、1回目にクッションを置こうと思い、急遽書き始めた文章ですのでまとまりがないものになりました。

多分、たまにとても重たい話が出てきたりすると思いますが、なるべく専門的な単語が並んだりして難しい話にならないように、ジャブジャブストレートくらいの感じでいきたいと思います。

いきなりタックルからのマウントポジションで上からパンチをたたき込んだ上、腕を取って極めるような事を書くことは…多分ないと思います。

 

それではまた次回。